むた・むた・むた・・・
目をつぶって、天塩川を思い描いたとき、
聞こえてくる川の流れは、むた・むた・むた・・・。
むかし、北海道でいちばん有名な登山用品店で、
ワゴンに入って200円ほどで投げ売られていたこの本。
本棚に置かれたり、ダンボールにしまわれたり、行方不明になったりしながら、
引越しをへて今はトイレの隅にちょこんと置かれています。
まさか、この本の舞台に住むことになるとは思いませんでした。
「北の川をめぐる九つの物語」
作者が幼いころから暮らした北北海道の川と北に生きる人々の暮らしの物語。
こんなマニアックでメルヘンな世界、
よっぽど川か魚か魚釣りが好きな人しか共感できないじゃないっすか!?
っていう内容だけど、そのどれかにヒットする人、ましてやそのどれもがヒットする僕には、
なんともリアルで心にスルスルっと入ってくる本なのです。
ヤマメを釣ったあの川、サクラマスが群れるあの合流点、ヤチダモの根が片足を突っ込んだあのカーブ、雪解けに暴れるあの支流、胡桃の葉の黄色が川を流れる季節。。。
そのどれも、僕の記憶と作者の記憶が完全に繋がっていると
勘違いできるお話でいっぱいです。
そして、物語の中で、天塩川(のことだと思う)が流れる様子を、むた・むた・むた・
と、描かれているのを読んで以来、僕のなかで天塩川の音は、むた・むた・むた・・・
ということにぴったりと決まりました。
上流や、瀬が唸っている場所では、もちろんもっと激しい音なんだけども、
川全体の性格を表現するときやっぱり、むた・むた・むた・・・がしっくり来ます。
天塩川、釧路川、十勝川、渚滑川、湧別川、歴舟川、美々川、天ノ川、、、、etc
川にはそれぞれの性格や、年齢、色や特性があると感じてしまいます。
そしてその川のカラーをピピッっと感じ取ることが、
川のガイドに必要な嗅覚なんじゃないかなあと、思ったりもするわけです。
〈あーんな川や、こーんな川。北海道の川は豊かだ〉
ハツラツとしたザーザーザーでもなく、淀んでしまったトロトロトロでもなく、
涼やかなサラサラサラでもなく、威圧的なゴウゴウゴウでもなく、
むた・むた・むた。
こんど、天塩川を下りにきたら、川の音を聞いてみてください。
僕には、むた・むた・むた。と、聞こえます。
リョータ
むた、むた、むた、の中に
返信削除ぬん、ぬぬん、ぬーん、、
と漕いでいく。。
目をつむってパドルを耳にして
天塩にさわりながら。。
加藤多一さんの本だ。加藤さん、少し前まで長沼にお住まいでした。
返信削除加藤さんが、天塩川を眺めながら、むた・むた・むたってつぶやいているのが目に浮かびます。